「枚方くらわんか五六市」加藤氏講演会レポート〈後編〉

【伊賀風土フードマーケット】


「昔は栄えていたけど、今は町に元気がない…」

そうした状況を抱える町は全国に多くあります。

その中で、「町に元気がない理由」としてよく言われるのが、
・既存店舗の売り上げ減少
・コミュニティの弱体化
・空き店舗がある
・駐車場がない
…これらが挙げられますが、
実はそうではない。


町に元気がない本当の理由は、
町に求められる「価値」が変化したこと。
そして、町づくりとは、
新しい町の「価値」を創造していくこと、なのです。

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それを三重県伊賀市の事例で見てみることとしましょう。


「伊賀」というと、皆さんは何をイメージしますか?
多くの方は、そう、「忍者」だと思います。

伊賀では、20年前から、6億円もの資金を使い、
「忍者」をアピールされてきました。
そして、伊賀と聞くと誰もが「忍者」を思い浮かべるほど、
そのイメージは定着しています。

では実際、この「忍者」アピールの施策をしてきて
町が元気になったかというと、
人口はピーク時の5割減、観光客も6割減、
と実は衰退の状況にありました。

それにも関わらず、「忍者」アピールは続き、
まるでハムスターの滑車のように、
何度も何度も同じ方法で、推し出してきました。
このままではいけない。

「伊賀=忍者」のイメージは定着しますが、
逆に、「忍者」以外の伊賀の魅力があまり知られていない、
忍者は知っていても、誰も町のこと(中身)についてはわかっていないのではないか。
…ということに気付いたのです。


そこで、観光向けにアピールしてきた「忍者」とは逆に、
伊賀の「日常」を再評価する、という取り組みを始めました。
日本にあるほとんどの都市は観光地ではないため、
町の価値を上げるには、町の「日常」に目をつけて、
町の要素をファン視点で掘り起こすことが大切、
と加藤さんは言います。

例えば、
伊賀の「日常」の風景、その一つが和菓子です。
伊賀は元々城下町で、
和菓子屋が10件もあるそうです。
そんな伊賀では、TPOで和菓子屋を使い分けていて、
お祝いにはこの店、
また、3時のおやつが和菓子、という習慣もあるそうです。
こんな町は、日本でも珍しいのではないでしょうか。


また別の「日常」の一つが、伊賀牛です。
近隣の「松阪牛」などに比べてあまり知られていないのは、
伊賀牛の肉が、伊賀の地で消費されているからなのです。
伊賀で飲食店に入って出てくる肉は、
実は伊賀牛が多かったりするのです。
有名な牛肉の産地であっても飲食店に入るとその土地の牛肉食べられるとは限らない中、
これもまた貴重なことではないでしょうか。


・・・これらは伊賀の「日常」で、伊賀に住む人にとっては当たり前の風景なのです。
でもこれを聞くと、
何となく「伊賀に行ってみたいな」と思えてきませんか?


そこで、第2日曜日にマーケットを開き、
地域の商売人を応援する取り組みを始めました。
伊賀の「日常」を伝えることを意識した取り組みです。

すると、和菓子がどんどん売れていって、
職人の方が自信につなげることができました。


また、伊賀の町の情報誌と言えば、
以前はやはり「忍者」を推し出したものばかりでしたが、
最近の情報誌には、伊賀の「町」の観光を推し出したものが見られるようになりました。
20代の女性が見る雑誌に載るほど、
一つの「町」として訪れてみたくなるような場所へと姿を変えつつあります。

これがつまり、
「忍者=伊賀」から、
「たくさんの魅力を持つ、一つの町としての伊賀」へと
「町の価値が変わった」ということです。

こうやって、町の新しい「価値」を創造していくことで、
町を元気にすることができるのです。

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(ここからは筆者の感想ですが)
新しい町の価値を創造するためには、
(日常に近い)リアルな町の様子をよく観察し、
そこから、どんな小さなことからでも魅力を感じることのできるような
敏感さ、素直さが大切なのだと思いました。
海辺のあたみマルシェを創っていく者としても、
日頃からどんな小さなことでも熱海の「日常」の中の魅力に
注目していきたいと思います!


加藤さん、この度は素晴らしいご講演ありがとうございました。

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